姉の婚約者はワルイ男
「本当ですから、手を離してください」
「ごめんごめん。つい、うれしくてね」
「デートはしますけど、どこか出かけるのは好きじゃないです」
「柚葉ちゃんらしいね。じゃあ、俺の家でのんびり過ごそう」
「どうして松葉さんの家なんですか?ウチでもいいですけど」
この男の家は一度言ったことがあるけれど、どうも緊張してしまいそうだ。
それに必要最低限のものしかないこの男の家に行っても……
「柚葉ちゃんの家じゃ、ご家族がいる可能性があるでしょ。それだといちゃいちゃできないじゃん」
「どうしていちゃいちゃする必要があるんですか。意味が分かりません」
「じゃあ、次の休みに迎えに来るから」
この男は、まったく話を聞いていないようだ。
でも、この男にもう一度言っておきたい。
たとえ、この男の家に行ったとしても、絶対にいちゃいちゃはしないと。