姉の婚約者はワルイ男



次の土曜日、わたしたち2人の休みが被った日に約束通りあの男はやって来た。

迎えに来た男の車に乗り込む際に、姉がひょっこり玄関から顔を出し含みのある笑いで見送ってくれた。

それがからかわれているのか、それとも応援しているのかはわからなかったけれど、家族にそんな反応をとられると、少しばかり照れくさい気がしてならない。


「松葉さん、家で何するんですか」

「それ聞いちゃう?柚葉ちゃん。それ聞いちゃうの」

「そういうのはいいですから。こっちは真面目に聞いてるんです」

「んー?特に決めてないよ」


だったら、どうして家にしたんだろう。

この男はこの前いちゃいちゃするつもりみたいなことを言っていたけれど。

本当にするつもりだろうか。

助手席からじとっとわかりやすい視線を送ると、駐車場に車を停めたこの男がふっと笑った。


「そんなに身構えなくても、手は出さないよ。まだね」


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