姉の婚約者はワルイ男
すべてお見通しのようだ、この男には。
しかも、“まだ”ってどういうことだ。
今日もしかしたら手を出されちゃうかもと思っていたのがバカらしい。
さっきから緊張で手汗いっぱいだったのに、そのドキドキを返してほしい。
「柚葉ちゃんが好きそうな映画とか借りてきたけど、これ見る?」
「いいですね。松葉さんチョイスが抜群です」
ミュージカル要素が少しでも入っているコミカル映画から、アニメ映画までさまざまある。
わたしが好きなものばかりだ。
「珍しく柚葉ちゃんが素直にほめてくれてる」
何度も「珍しい」とつぶやきながら、松葉さんが堪能している。
そこまで感激されてしまうと、余計に恥ずかしくなってきた。
「あと、アマゾンプライムに登録してるから、ドラマとかも見放題だよ。好きなドラマとかある?」
「えっと、ミステリー系も好きなんですよね」