姉の婚約者はワルイ男
「どうしてそれを?」
「だって、キミさ。俺と会った後は決まって彼氏のところに行くでしょ?わかりやすいよねー」
わたしのことをわかりやすいなんて言う人は、この男だけだ。
わたしは基本的に人から表情が変わらないから、何考えているかわからないと言われる。
だから、親しい人は片手で数えるくらいしかいない。
そんなわたしのことをわかりやすいなんて言うこの男は、本当にわからない。
「彼氏に俺の愚痴でも聞いてもらってた?俺のこと嫌いだもんねー、キミは」
そう、わたしは、嫌いだ。
この男のことが。
姉の婚約者である、この男が。
「でも、俺は嫌いじゃないよ?」
クスリと笑うその男は、心臓に悪い。
わたしの心臓をおかしくさせる。