姉の婚約者はワルイ男



「えっと、松葉さん、次の金曜日か土曜日は休みですか?」

「土曜日は休みだよ」

「じゃあ、土曜日で」


思わず食い気味に答えてしまうと、今度は声をあげてこの男に笑われた。

いつもニコニコしているイメージはあったけれど、この男は今日いつになく笑顔な気がする。


「ほんと、かわいーね、柚葉ちゃんは。こう提案して正解だったかも。じゃあ、来週また2話目見ようね」


そのあと、わたしたちはこの男が借りてきた映画を見て、しばらくのんびり過ごした。

しかも感動して声が出るタイミングが同じで、そのたびに視線が合ってその男が優しく笑う。

わたしも思わず笑ってしまったのは予定外だったけれど、こんなに楽しい休日は久しぶりだったのも事実だった。

そして、映画を見終わったあとは、日も暮れてすっかり夜を迎えようとしていた。


「柚葉ちゃん、お腹空かない?夕飯も一緒に食べようよ」

「お腹は空きましたけど……もしかして松葉さん、料理できるんですか」

「いや、まったく」


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