姉の婚約者はワルイ男
「松葉さん、それだと玉ねぎ大きすぎません?もう少し小さく切ってくれないと。みじん切りですよ、みじん切り」
「……柚葉ちゃん、これでもみじん切りしてるよ」
この男はそう言い切るけれど、どこからどう見てもざく切りにしか見えない大きさだった。
無言のわたしがまた自分をバカにしていると思ったのか、突然玉ねぎを切る手をとめた。
「そこまで言うなら、柚葉ちゃんがやってみて。みじん切り」
「いいですよ」
料理は慣れていないけれど、みじん切りはできる。
食材を切るのは、姉の手伝いで時々やっているから、それだけはそこそこの腕前だと思う。
「柚葉ちゃん、うまいね」
「そうですね。松葉さんよりは」
「言うね、柚葉ちゃん」
そのあとも、レシピとにらめっこしながらなんとか2人でチャーハンを作り上げた。
食材の形はさまざまで、卵も少し焦げていたけれど、なかなかおいしそうな出来に仕上がった。
「出来たね。おいしそうに」
「ですね。なかなか上手にできたと思います」