姉の婚約者はワルイ男
第9章 ワルイ男と付き合うということ
松葉さんと付き合い始めて、彼との時間はあまり変わらなかった。
彼の家で一緒にドラマや映画を見て、一緒にご飯を作って一緒に食べての繰り返し。
やっていることは今までと変わらない。
でも———
「松葉さん、離してもらえますか?」
「イヤだね。付き合ってるんだし、手つなぐくらい繋いでもいいでしょ」
「でも……っ」
「緊張して落ち着かないの?かわいーね」
図星を疲れて、何も言えなくなる。
本当に松葉さんは、わたしの心を読んでいるみたいに鋭い。
「あと、名前ね。名前で呼んでくれたら、離してもいーよ」
「な、名前……」
「ほら、絢斗って言ってごらん」
「あ……あ……あ……」