姉の婚約者はワルイ男
やっぱりその先がどうしても言えない。
名前を呼ぶだけなのに、どうしてこんなに照れくさくなるのだろう。
「名前は追々呼べるように頑張ります」
「ふっ、じゃあ、それまで楽しみにしておくよ」
呼べない代わりに、彼は手をずっと離してはくれないようだ。
さっきよりも力強く、逃げないようにと手を握られる。
「柚葉ちゃんも好きなことしていーからね。付き合ってるんだから」
よほどうれしいのか付き合っていることを連呼してくる。
だったら、こっちもその気で行こう。
「じゃあ、そうします」
勢い任せだったけれど、一歩彼に近づいて体を傾けた。
少しあこがれがあった。
さっき見た恋愛映画のカップルがこんな風に、彼に寄りかかってテレビを見ていたから。