姉の婚約者はワルイ男



「俺のことからかうから。次やったらもっとすごいことするからね」


そう言って、彼はまた顔を近づけてくるものだから、これ以上は心臓が持たないと慌てて手を一杯前にのばした。


「えっと、えっと……松葉さんの家の本棚って小さいですよね」


不自然なくらいに話題をそらした。

たまたま目に入ったものを言っただけの、適当な話題だった。

それでも彼は笑いながら、答えてくれた。


「まあね。小説が数冊とアルバムくらいしか入ってないから」

「アルバム……ですか」

「見たい?」


好奇心には勝てなくて、少し食い気味にうなづくと、彼はおかしそうに口元を押さえながら、アルバムを1つ手に渡してくれた。

彼が渡したのは、高校生のときのアルバムだ。


「好きに見ていーよ。ちょっと部屋に行ってくる」


そう言って、奥の寝室に消えた彼を待つ間、ペラペラとそのアルバムをめくっていた。

< 95 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop