姉の婚約者はワルイ男
確かにつけるたびに、「これは松葉さんからのプレゼント」だと彼のことを思い出しそう。
また、彼の罠にはまっていく気がしてならない。
でも、悪い気がしない。
「うん、やっぱり似合うね、柚葉ちゃん。かわいー」
松葉さんの口癖は「かわいー」。
どんな姿の私も「かわいー」と言ってくれる。
きっとそんなことを思うのは、松葉さんだけだろう。
恋愛経験の少ないわたしでもわかった。
松葉さんは今からわたしを抱き寄せて、キスをしようとしている。
まさにそんな雰囲気だった。
そんな空気の中、玄関の扉がガチャっと開いて、誰かが入ってくる音がした。
「……まさか」
雰囲気を壊され、少しイラついている彼が即座に立ち上がると、玄関先を見つめたまま「やっぱり」とつぶやいた。