姉の婚約者はワルイ男
彼の視線の先には、美人な年上の女性が立っていて、なんとなく松葉さんに雰囲気が似ていた。
言われなくても、その女性が誰かが見当がつくくらいに。
「母さん、来るときはいつも連絡してからって……」
「ごめんなさいねー。電話してもいつも、すぐに出ないじゃない。折り返しもなかなか寄こさないし」
「だからって急に来られると」
「いいでしょ。いつ来たって。困ることなんて……って、あら?」
予想通り、家にやって来たのはおそらく合いかぎを持っていた松葉さんのお母様だった。
その人の視線が、わたしをとらえ、みるみるうちに目を輝かせている。
「絢斗!もしかして彼女!?」
興奮気味に、松葉さんの肩を叩くお母様はとてもおちゃめな方なようだ。
わたしもすぐにあいさつをせねばと、慌てて立ち上がると、彼を押し倒す勢いでこちらに向かってくる。
「はじめまして!絢斗の母です!彼女さんよね!?かわいらしい方ね!」
こちらが圧倒されるくらいとても明るい方のようだ。
お母様の奥で、松葉さんがごめんと頭を下げている。