花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「入籍も済んで新婚真っ只中なのにね。結婚報告の会見、評判よかったらしいじゃない」
凛がハンドタオルで額の汗を軽く拭いながら、告げる。
婚姻届を提出したと先週半ばに報告された。
そして以前の予定通り婚姻を発表し、世間を騒がせていた。
妻は同グループの社員という情報以外はすべて伏せているという。
仕事は旧姓で続けているため、当社で結婚を知っている人間は上層部や直属の上司、凛くらいだ。
とはいえ、以前に婚約を伝えているせいもあり、同僚たちの大多数は恐らく勘づいているだろう。
「妻が同じ会社勤務で嬉しいって会見で笑顔で話す姿に好感度が上がったらしいわよ。副社長は妻を溺愛している、今までの印象が変わった、とかなんとか」
さすが情報通の親友は、世間の反応をよく知っている。
「実際は契約結婚なんだけどね……」
私の恋心も実情も知っている親友は、困ったように眉尻を下げた。
「ねえ、ずっと気持ちを隠したままでいいの? 最近顔色がよくないし、食欲も落ちてるでしょう? つらいんじゃないの?」
尋ねられ、慌てて笑顔を貼りつける。
「大丈夫、新生活にバタバタしてたのと夏バテかな? 心配してくれてありがとう」
「だったらいいけど……無理しちゃだめよ。一度きちんと話してみたら?」
「忙しい人だし、そもそも恋愛を求めていないの。本心を知られたら離婚されてしまう。そばにいられなくなるのは嫌なの」
言い訳のように早口で告げると、凛が小さく息を吐いた。
凛がハンドタオルで額の汗を軽く拭いながら、告げる。
婚姻届を提出したと先週半ばに報告された。
そして以前の予定通り婚姻を発表し、世間を騒がせていた。
妻は同グループの社員という情報以外はすべて伏せているという。
仕事は旧姓で続けているため、当社で結婚を知っている人間は上層部や直属の上司、凛くらいだ。
とはいえ、以前に婚約を伝えているせいもあり、同僚たちの大多数は恐らく勘づいているだろう。
「妻が同じ会社勤務で嬉しいって会見で笑顔で話す姿に好感度が上がったらしいわよ。副社長は妻を溺愛している、今までの印象が変わった、とかなんとか」
さすが情報通の親友は、世間の反応をよく知っている。
「実際は契約結婚なんだけどね……」
私の恋心も実情も知っている親友は、困ったように眉尻を下げた。
「ねえ、ずっと気持ちを隠したままでいいの? 最近顔色がよくないし、食欲も落ちてるでしょう? つらいんじゃないの?」
尋ねられ、慌てて笑顔を貼りつける。
「大丈夫、新生活にバタバタしてたのと夏バテかな? 心配してくれてありがとう」
「だったらいいけど……無理しちゃだめよ。一度きちんと話してみたら?」
「忙しい人だし、そもそも恋愛を求めていないの。本心を知られたら離婚されてしまう。そばにいられなくなるのは嫌なの」
言い訳のように早口で告げると、凛が小さく息を吐いた。