花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「葵、逢花さん」
新姓で突如背後から名前を呼ばれ、一瞬自分だと思わず、戸惑いながらも足が止まった。
聞き覚えのある声に振り向くと、涼しげな水色のフレンチスリーブのワンピース姿の加賀谷さんが立っていた。
「突然ごめんなさい。少しお話したいのだけど、お時間をいただけない?」
私を見つめる目は真剣で、逃がさないと暗に言われている気がした。
「なんの、お話でしょう?」
思いがけない事態に問い返す声が掠れる。
「ここでは目立つし、暑いでしょう? よかったら、私の車の中で説明させてほしいの」
車内という密室に若干危機感と抵抗感を覚える私の心中を察したのか、彼女は品よく口角を上げる。
「警戒しないで。車をすぐ近くの駐車場に停めてあるの。どこかお店に入ってもいいんだけど……」
「お気遣い、ありがとうございます。あの、お車の近くでお話できませんか?」
会社の前で話し込むのは避けたいけれど、近くの店に入って誰かに見られたり、長話になるのも嫌だ。
多少暑くとも立ち話で済ませたい。
私の提案を了承した加賀谷さんとともに、駐車場まで移動する。
道中、まるで友人のように他愛無い質問を繰り返す、彼女の真意がよくわからない。
加賀谷さんの愛車は当社近くのコインパーキングに停められていて、車内は無人だった。
駐車場内は大きな照明のおかげでとても明るい。
新姓で突如背後から名前を呼ばれ、一瞬自分だと思わず、戸惑いながらも足が止まった。
聞き覚えのある声に振り向くと、涼しげな水色のフレンチスリーブのワンピース姿の加賀谷さんが立っていた。
「突然ごめんなさい。少しお話したいのだけど、お時間をいただけない?」
私を見つめる目は真剣で、逃がさないと暗に言われている気がした。
「なんの、お話でしょう?」
思いがけない事態に問い返す声が掠れる。
「ここでは目立つし、暑いでしょう? よかったら、私の車の中で説明させてほしいの」
車内という密室に若干危機感と抵抗感を覚える私の心中を察したのか、彼女は品よく口角を上げる。
「警戒しないで。車をすぐ近くの駐車場に停めてあるの。どこかお店に入ってもいいんだけど……」
「お気遣い、ありがとうございます。あの、お車の近くでお話できませんか?」
会社の前で話し込むのは避けたいけれど、近くの店に入って誰かに見られたり、長話になるのも嫌だ。
多少暑くとも立ち話で済ませたい。
私の提案を了承した加賀谷さんとともに、駐車場まで移動する。
道中、まるで友人のように他愛無い質問を繰り返す、彼女の真意がよくわからない。
加賀谷さんの愛車は当社近くのコインパーキングに停められていて、車内は無人だった。
駐車場内は大きな照明のおかげでとても明るい。