花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「婚約者の接し方に悩んでね……男性目線のアドバイスがほしくて、つい元婚約者っていう気安さで頼っちゃったの」


「依玖さんとの関係に悩まれていたんじゃ……?」


「まさか、それなら直接問題点を指摘するわ」


大きく片手を振って即座に否定する様子に驚く。


「誤解させた気がして、説明に行きたいって何回も依玖に言ったのよ!」


そう言って、加賀谷さんは大きく息を吐いた。


「巻きこんで、嫌な思いをさせて本当にごめんなさい。私の話を聞いてもらえない?」


申し訳なさげな物言いにうなずくと、加賀谷さんは嬉しそうに微笑んで話し出した。


「婚約破棄後に両親に勧められたお見合いで、今の婚約者に出会って、初めて恋をしたのよ」


今までの自分の経験がまったく役に立たず、初めての感情に戸惑って、認めるのにずいぶん時間がかかったのだという。


「自分が変わるのが怖くて余裕もなかったんだけど、やっと最近感情の折り合いがついたの。それで勝手ながら、あなたへの失礼な真似の説明と謝罪をしたいと依玖に伝えたら猛反対されて……」


本当にごめんなさいと再度謝る加賀谷さんに、どうか気にしないでほしいと伝えた。


「今の私は婚約者との未来が本当に楽しみで幸せなの」


きっぱりと言い切る加賀谷さんの笑顔は眩しかった。

緊張が解け肩の力が抜けたとき、どこか思案するような様子で加賀谷さんが話しかけてきた。
< 108 / 190 >

この作品をシェア

pagetop