花縁～契約妻は傲慢御曹司に求愛される～
「葵さん……ごめんなさい。逢花さんと呼ばせてもらっていい？」


「はい、大丈夫です」


「ありがとう。唐突だけど、葵グループの若手男性社員を狙った詐欺は知っている？」


うなずくと、詐欺の女性の詳細な特徴を知っているかと尋ねられ、知らないと答えた。

さらに幾つか質問をされたが、すべて返答できなかった。


「ごめんなさい、実はその女性が逢花さんではと疑われていたの」


「ええっ！？」


寝耳に水の出来事に、思わず大声が出た。

身に覚えのない疑いをかけられている事実に驚きと恐怖が湧きあがる。


「落ち着いて、今は葵グループの上層部も違うとわかっているから」


動揺する私を宥めながら、加賀谷さんが事件の詳細を説明してくれた。

被害男性たちから聞き出した話によると、女性の立ち居振る舞いや髪型などの外見、趣味嗜好などが私によく似ていて怖くなった。

そもそも私への疑惑も証言をもとに堤インテリアの女性社員を検索したせいらしい。

加賀谷さんは元婚約者で親密な取引先という立場上、極秘情報を知らされていたそうだ。


「私じゃありません……被害男性の方々と面識はないです」


震える声で訴えると、加賀谷さんはうなずく。


「ええ、でも条件が揃いすぎていて、解決を急ぐ上層部の疑いがなかなかはれなくてね」


そこまで言われて、やっと加賀谷さんが言いたい事柄に気づいた。
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