花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「依玖さんも……元々私を疑っていた……?」


「逢花さんと詐欺の女性には、なにか共通点があると上層部は今も考えているみたいなの」


質問に答えず、淡々と説明する姿に嫌な予感がした。

依玖さんは上層部の人間だ。


「だから依玖が逢花さんと接触すれば、事態が動くと予想したらしいわ」


詐欺の女性の本当の狙いは、依玖さんだと親友が話していたのを思い出す。


「依玖の本心はわからない。でも逢花さんとの結婚を公表して敵をおびき寄せようとしている可能性は高いはずよ」


確かに、独身男性社員が狙われ続ける現状を対策もせず放置すれば企業イメージの悪化はもちろん、各取引にも悪影響を及ぼすだろう。

これだけSNSが発達している世の中なら噂話なんてすぐに広まる。


「余計なお世話だし、誤解かもしれないとわかっているわ。でもきちんと真実を話し合うべきだと思ったの。自分の経験談じゃないけれど、話して初めてわかる事柄だってあるから」


真摯な口調と視線は、嘘をついているようには見えなかった。


「あれだけ恋愛を避けていた依玖が結婚を決めた逢花さんを、ふたりを、応援したいの。依玖はいつもひとりで物事を完結させるから不確定な話はしないし、ふたりの仲が拗れる前に逢花さんに知っている事柄を話しておきたくて」


ちなみに彼女の婚約者に、依玖さんの了承を得てから話すべきではと言われたそうだが、押し切って来たらしい。
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