花縁～契約妻は傲慢御曹司に求愛される～

「教えてくださってありがとうございます。少し、考えてみます」


思考がまとまらず、礼を告げるだけで精一杯だった。

加賀谷さんは自宅まで送ると言ってくれたが、早くひとりになりたかったので丁重に断った。

すると加賀谷さんは自身の名刺を取り出し、なにかあれば連絡をと言われ、再度礼を告げ別れた。

すぐそばにある駅までの道のりがとても遠く感じられた。

早く帰って、ゆっくり考えたい。


でも私が帰るべき場所はあの家なの？


私は名目上の妻で、いわゆる囮なのに？


そもそも偶然にしてはできすぎていた。

好きでもない私をわざわざ捜して、妻にする理由がよくわからなかった。

彼ならどんな条件をつけても伴侶になりたいと願う女性は大勢いたはずなのだから。
　

出会いもなにもかも、最初から仕組まれていた？


後々、揉めないように契約結婚にしたの？　


私を助けてくれたのも願いを叶えてくれたのも全部、自身の目的を達成するための手段のひとつだった？


だったら後継者は？　


私との間に子どもを授かって困らないの？　


それともすべて加賀谷さんの勘違い？