花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
幾つもの相反する考えが浮かんでは消え、思考は一向にまとまらない。

考えれば考えるほど頭がズキズキ痛んで、吐き気がこみ上げてきた。

まるで生理前のような症状に気分はさらに下降する。


そういえば、前回の生理はいつだった?


芋づる方式に浮かんできた疑問にふと足が止まる。

落ち着いて、と自分に何度も言い聞かせながらスマートフォンで確認した。


「……六月……」


つぶやいた声は弱々しく、焦りと動揺で、どこからなにを考えればいいのかわからなくなった。

ただひたすら帰宅だけを目指し、最寄り駅までなんとか戻った。

道中の記憶はおぼろげだが、無意識にお腹に手をずっとあてていた。


ここに、依玖さんとの赤ちゃんが来てくれた?


速まる鼓動を持て余しながら、駅前から少し離れたドラッグストアに向かう。

検査薬で確認しようと、震える指で周囲を気にしながら購入し、急ぎ足で帰宅した。

依玖さんの帰りが遅くなる日でよかったと胸を撫でおろし、リビングのソファに座り込んだ。

バッグから検査薬を取り出して説明書きを読みつつ、他人事のようにぼんやりと眺めていた。

早く検査しなくてはとわかっているのになかなか立ち上がれなかった。

まずは準備をとバッグを手に自室に向かう。

部屋着に着替えて再びリビングに戻り、検査薬を握りしめながら再びウロウロしてしまう。


しっかりしなさい。


検査するのよ。


必死に自分を叱咤して、お手洗いへと足を進めた。
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