花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「離れたくなかったの。好きな人の赤ちゃんを授かって嬉しくて……でも私は囮だから、依玖さんが困ったらどうしようって怖くて……」


「待って、囮ってなんの話?」


甘い雰囲気を打ち破る怪訝な声が、部屋に響いた。


「詐欺の女性を捕まえるために、依玖さんは私に近づいたって聞いたの」


「誰に? まさか美津か?」


躊躇いがちにうなずくと、依玖さんが苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた。

その後、いつ、なぜ美津に会ったのかと尋ねられ、加賀谷さんとの出来事を正直に話した。


「まったく、あいつは……」


話を聞き終えた彼は軽く目を伏せ、大きなため息を吐いてから腕を伸ばした。


「誤解させて悪かった。美津の言う通り、逢花に特徴が似ていて当初疑っていたのは事実だ。だが、囮にするために近づいて結婚したんじゃない」


私を自身の胸に抱き込みながら、真剣な面持ちで説明を続ける。

加賀谷さんの話は概ね合っていたが、私に関しては絶対に違うと強い口調で言い切られた。
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