花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
お互いの両親に取り急ぎ電話で妊娠報告をすると、とても喜ばれ同時に私の体調を心配してくれていた。
社内で私の妊娠については結婚と同様、上層部と直属の上司、凛には話していた。
さらに親友には依玖さんとの話し合いの結果も伝えていたせいもあって、安堵した様子で祝福された。
お盆休みも過ぎ、八月下旬にさしかかった昼休みの今日、凛は急な打ち合わせが入ったため社員食堂でひとり、食事をしていた。
つわりのせいか最近はあまり食欲がなく、あっさりしたものを口にしていた。
「……ここ、いいか」
うつむいてざるうどんを食していると、聞き慣れた声が響き、思わず頭を上げる。
「高野さん、お疲れ様です。ほかにも席は空いていますよ」
話しかけられた驚きを胸の奥に咄嗟に押し込め、淡々と名字を口にして返答する。
午後一時半を過ぎ、食堂内の人影はまばらで席も空席が目立っており、相席が必要な状況でもない。
「話があるんだ」
「……仕事に関係する事柄なら聞くわ」
渋々返事をすると、久喜は無言で冷やし中華が載ったトレーをテーブルに置いて、私の正面の席に腰を下ろした。
「……結婚おめでとう」
「ありがとう」
端的に礼を告げると、彼の視線は私の左手薬指に注がれていた。
入籍した際に周囲に既婚者とわかるようにと揃いの結婚指輪を贈られた。
勝手に選んで申し訳ないと謝罪されたが、シンプルながらも品の良いデザインがとても気に入っていた。
なにより、好きな人とペアのものを身につけれる幸せをひっそりと嚙みしめていた。
社内で私の妊娠については結婚と同様、上層部と直属の上司、凛には話していた。
さらに親友には依玖さんとの話し合いの結果も伝えていたせいもあって、安堵した様子で祝福された。
お盆休みも過ぎ、八月下旬にさしかかった昼休みの今日、凛は急な打ち合わせが入ったため社員食堂でひとり、食事をしていた。
つわりのせいか最近はあまり食欲がなく、あっさりしたものを口にしていた。
「……ここ、いいか」
うつむいてざるうどんを食していると、聞き慣れた声が響き、思わず頭を上げる。
「高野さん、お疲れ様です。ほかにも席は空いていますよ」
話しかけられた驚きを胸の奥に咄嗟に押し込め、淡々と名字を口にして返答する。
午後一時半を過ぎ、食堂内の人影はまばらで席も空席が目立っており、相席が必要な状況でもない。
「話があるんだ」
「……仕事に関係する事柄なら聞くわ」
渋々返事をすると、久喜は無言で冷やし中華が載ったトレーをテーブルに置いて、私の正面の席に腰を下ろした。
「……結婚おめでとう」
「ありがとう」
端的に礼を告げると、彼の視線は私の左手薬指に注がれていた。
入籍した際に周囲に既婚者とわかるようにと揃いの結婚指輪を贈られた。
勝手に選んで申し訳ないと謝罪されたが、シンプルながらも品の良いデザインがとても気に入っていた。
なにより、好きな人とペアのものを身につけれる幸せをひっそりと嚙みしめていた。