花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
勘違いも甚だしい発言に、もはや反論する気も起らず、無言で食堂を後にした。

だが大声で久喜が叫んだため、周囲からの視線が痛いほど突き刺さる。

私が元恋人と復縁するかのような勘違いをされているようで居たたまれない。

結果として、久喜の情報は正しかった。

最悪な昼休みを過ごした翌日、出社するなり上司に異動の件を正式に告げられた。

まずは久喜の担当しているホテルの備品、アメニティグッズやホテルオリジナルグッズの開発、販売のプロジェクトに出向という形で加わり、ゆくゆくは葵株式会社とうちのパイプ役を担うようになってほしいそうだ。

正式な異動は出向期間を終えた後らしいが、ほぼ本決まりだから安心していいと説明された。

辞令や異動は会社員なら唐突なものだと理解しているが、希望などが考慮されるはずなのになぜこのような事態になっているのかわからない。

昨夜依玖さんに事情を尋ねたくてメッセージを送ったが、未読のままだった。

今日の帰宅は遅くなると先週末に聞いていたので、起きて待っていたが日付が変わっても帰ってくる気配はなく、あきらめて眠りについた。

朝は私が起きだすと、すでに彼は身支度を終え、家を出るところで話はできなかった。

しかもタイミング悪く、今日から四日間大阪に出張だった。
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