花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「依玖さんは後悔しているの?」


私との、結婚に。


問う声が震える。

なぜ今になってこんな話し合いをしているのか理解できない。

お互いの気持ちをぶつけて正式な夫婦として歩みだしたところなのに。


私はダメで、あなたの振る舞いは正しいの? 


依玖さんの決定に反対してはいけない? 


私の気持ちは、希望は、少しも聞き入れてもらえないの?


「逢花は出産についてだけ考えていればいい」


迷いなく告げられて息を呑んだ。

心臓が早鐘を打ち、心に氷塊を埋め込まれたような気がした。


私は子供を産むだけの存在? 


あなたの“好き”は私の“好き”と同じ種類じゃない?


心の中を暗い想いが占拠し始める。

少なくとも熱量は、重さは、私とはきっと違う。


「私、信頼されていないの……?」


「信用がなければ最初から契約を持ち掛けないし、伴侶にも選ばない」


この短い時間の中で何度“契約”と言われただろう。

繰り返されなくても、もう十分身に染みてわかっているのに。

告白されても妊娠しても、依玖さんの中で私の立ち位置はあくまでも『契約結婚をした妻』でしかなく、今後も変わらないと思い知らされた。
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