花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
10.お互いの“最愛”
フロアに戻った後、先輩にどのように報告して、仕事を終えたのか曖昧な記憶しかない。

いつものように迎えの車に乗り込み、流れていく景色を眺めながらもう一度先ほどの出来事をぼんやりと思い出していた。


依玖さんが一緒にいたい人は誰?


私が、身を引けばすべてうまくいくの?


悲しく暗い想いに心が支配されそうになったとき、贈られた二度目のプロポーズが脳裏を横切った。


『もう一度、今日から、俺と本当の夫婦になってくれませんか?』


あの瞬間、とても幸せだった。

信じられなくて、奇跡だと思った。

今、結論を先走って出したくない。

もしかしたらなにか誤解している可能性だってある。

もう一度、きちんと想いを伝えよう。

どれだけ依玖さんを好きで大切に想っているか、そばにいたいのか。

そのうえで、彼の本心を聞いて、終止符を打ったって遅くない。

だってこんなにも好きになれる人にはきっと二度と出会えないだろうから。

自分にこれほど強い執着心と感情があるなんて知らなかった。

彼はいつだって新しい私を見つけてくれる。

なにより、かけがえのない命を授けてくれた。

これまでの依玖さんとの日々は私の宝物で支えだ。


ちゃんと、話そう。


決心すると、自分でも驚くほどに心が落ち着いた。
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