花縁～契約妻は傲慢御曹司に求愛される～
「今日は午後六時半から十五階の中ホールで懇親会だから、皆きちんとスケジュール確認して仕事を仕上げてね」


先輩のきびきびした声がフロアに大きく響く。


「顔色があまりよくないけれど大丈夫？　無理して参加しなくていいからね」


優しい先輩の気遣いに大丈夫ですと答えた。

先輩は小さく息を吐いて、再度私に同様の内容を告げて自身の仕事に取り掛かった。

昼休みにスマートフォンを確認すると、依玖さんからの着信とメッセージが届いていた。

きちんと対応しなくてはと考えるのに指が動かなかった。

話があると口にしたのは自分なのに、どうしても対峙する気持ちになれなかった。

今夜懇親会がある件は依玖さんにも報告されていて、スケジュールが合えば顔を出すとも言われていたのに。

昨日から続く暗い気持ちを抱えたまま、スマートフォンをバッグに入れ昼休みを終えた。

午後六時を過ぎて、幹事たちが準備のため中ホールへ向かったのを皮切りにフロアの人たちも片付けに取り組み始めた。

午後六時二十分には先輩と私を含む数人の社員以外は移動していて、フロアは閑散としていた。
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