花縁～契約妻は傲慢御曹司に求愛される～
「笠戸さん！　どういうつもりなの？」


「それはこっちのセリフですよ。私の計画は完璧だったのに先輩のせいで全部台無しなんです。責任を取ってください」


いつもの可愛らしい雰囲気とは真逆の、鋭い視線とキツイ口調で腕に力を込めてくる。


「い、痛い、離して！」


「離したら逃げるでしょう？」


そう言って、彼女は肩に下げた大きなバッグから頑丈な紐を取り出し、素早い手つきで私の両手首を縛りあげた。


「やめてっ」


叫んで身をよじるが予想以上に強い力で押さえつけられ、近くにあった椅子に座らされた。

さらに足首も縛られて身動きが取れなくなった。


「笠戸さん、なんでこんな真似を……」


「恋人を取られ、騙されて傷ついてるくせに、結婚式まで出るお人よしにイライラしているからよ」


「なにを、言ってるの……？」


普段とは違いすぎる口調と態度に戸惑う。


「私、あなたが大嫌い。不幸のどん底に落ちて、立ち直れず絶望とともに生きていくのがお似合いのくせに」


衝撃的な物言いにひゅっと息を呑んだ私を睨んで、笠戸さんは話し続ける。


「外見が似ているってこれまで何度言われたか知ってる？　こんなダサくて鈍感な女と同列にされて、評判や噂を聞かされるなんて屈辱なの！」


どんどん語気が荒くなっていく。

彼女は何社かの派遣経験を経て堤インテリアにやってきたと聞いた覚えがある。
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