花縁～契約妻は傲慢御曹司に求愛される～
「面識のない女と比較されるなんてありえない。私が一番優秀で可愛いのに！　どうして私の契約が切られて社員になれないの？」


どうやら彼女は堤インテリアに入る前から私を知っていて、比較対象にされ、恨んでいたらしい。

笠戸さんの思考が理解できない。


「完璧な私が地味女の二番手なんて許せない」


さらに笠戸さんは自身のＳＮＳについて話し出した。

モテ女のテクニックという類のものを積極的に配信していてフォロワー数やコメント内容、どれほどの固定ファンがいるのかを自慢げに語り続ける。


「私ほど価値がある人間はいないのに、あなたのせいでいつも台無しよ！」


再び突然怒り出した笠戸さんに、理由がわからず肩がビクリと跳ねた。


「だから思いついたの。ねえ、先輩、詐欺の事件って知っています？」


急に以前の呼び方を口にした彼女は、虚ろな目で口元を歪める。


「……葵株式会社の男性社員が被害にあった事件よね？」


「フフッ先輩には特別に教えてあげます。私がその詐欺の女性なんです」


口角を上げてさらりと口にする姿に、背中に冷たい汗が一筋流れた。


「……どうして、そんな真似を……」


「全員、あなたみたいなダサい女を理想にしているくだらない男たちだからよ。地味女を選ぶと痛い目に合うって教えてあげたの。優しいでしょ、私」


感謝してほしいわ、と悪びれもせずに微笑む姿に寒気がする。
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