花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「おかしいわね、受付は無人だし……総務課にはフロアに戻ったはずだって聞いたのに。バッグを置いて帰らないわよね」
「先輩、会議室や応接を使っている可能性もありますよ」
「そうね、確認しに行きましょう」
部屋から出ていきそうな様子に慌てて、笠戸さんを振り払おうともがくが、やはり力が強く抑え込まれてしまう。
逃げ出せるチャンスだったのにふたりはすぐに退出してしまった。
「まったくおとなしく懇親会にいればいいのに。変な真似をするなと言ったでしょ」
ギュッと腕を強い力で掴まれて、痛みにうめく私の口元からタオルが外された。
「バッグはどこ?」
強い口調で問われ、タオルを取ったのはこのためかと理解した。
仕方なしにバッグの場所を伝えると、すぐに笠戸さんが取りに行った。
「急いでここを出るのよ!」
早口で告げながら、彼女はさらにフロアの奥から台車と大きめの段ボール箱を持ってきた。
そして私をフロアの出入り口付近へと再び強引に引っ張る。
もう一度紐を緩められたとはいえ、歩きにくいし縛られた箇所が食い込んで痛い。
「ここにあなたが入って、私があなたの振りをして通用口から出ていくの」
そう言って、私の首にかけていたIDカードを奪い取る。
陳腐というか雑な脱出方法に呆れるが、ほかに協力者がいない現状がわかって少し安堵する。
「先輩、会議室や応接を使っている可能性もありますよ」
「そうね、確認しに行きましょう」
部屋から出ていきそうな様子に慌てて、笠戸さんを振り払おうともがくが、やはり力が強く抑え込まれてしまう。
逃げ出せるチャンスだったのにふたりはすぐに退出してしまった。
「まったくおとなしく懇親会にいればいいのに。変な真似をするなと言ったでしょ」
ギュッと腕を強い力で掴まれて、痛みにうめく私の口元からタオルが外された。
「バッグはどこ?」
強い口調で問われ、タオルを取ったのはこのためかと理解した。
仕方なしにバッグの場所を伝えると、すぐに笠戸さんが取りに行った。
「急いでここを出るのよ!」
早口で告げながら、彼女はさらにフロアの奥から台車と大きめの段ボール箱を持ってきた。
そして私をフロアの出入り口付近へと再び強引に引っ張る。
もう一度紐を緩められたとはいえ、歩きにくいし縛られた箇所が食い込んで痛い。
「ここにあなたが入って、私があなたの振りをして通用口から出ていくの」
そう言って、私の首にかけていたIDカードを奪い取る。
陳腐というか雑な脱出方法に呆れるが、ほかに協力者がいない現状がわかって少し安堵する。