花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
やっと、初めて人を愛する気持ちを学んだのに、失うなんて耐えられない。


逢花しかいない、ほかの誰でもなく、彼女だけがほしい。

恋とともに嫉妬も知った。

元婚約者が近づくのは許せなかった。

初恋の扱い方に四苦八苦して、振り回される自分がみっともなくてイラ立たしい。

逢花の前ではいつだって魅力的な自分でいたいと願うのに、今まで培ってきた手腕はなにひとつ役に立たなかった。

想いをコントロールできず、整理もせずにぶつけてしまった。

彼女を奪われたらという恐怖、笠戸を早く捕まえたいという焦りも大きかった。

今ならすべてが最悪な手段で、彼女がどれだけ傷つき追い込まれたか理解できるのに、あのときの俺にはできていなかった。

愛しているのに、ふたりで過ごす温もりや優しさ、心地よさを知っているのに、追い込んで孤独にしてしまった。

普段俺の仕事に、生活すべてに、遠慮して主張しない逢花がどれだけの勇気を振り絞って時間が欲しい、話したいと言ってきたのか、よく考えればわかったはずだったのに。

笠戸の件さえ片付けばすべてうまくいく、元通りに戻ると傲慢にも思い込んで逢花の気持ちを見失っていた。

笠戸の狙いは俺との結婚なので、美津との親密な姿をわざと見せ、逢花との不仲を匂わせた。

笠戸が妊娠しておらず、高野とほぼ破局状態だという情報もすでに得ていた。

幾重にも偶然を装い、彼女の思惑通りだと油断させれば悪事の証拠が掴めると確信していた。
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