花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
ところがあの女は俺と美津は復縁しないと自信を持っていたらしい。

前勤務先というコネを存分に利用し、調べ上げていたという。

そのせいでさらに矛先は鋭く、逢花のみへ向かった。 

逢花への執着にも似た、強い思い込みと一方的な恨みは想像以上だった。

そして、一番に直接俺を狙ってくるという予想は見事に外れていた。


「逢花と敢えて離れていたのが仇になるなんて……」


「依玖、自分を責めるな」


頭を抱え項垂れる俺の頭上で、誠の気遣うような声が響く。


「危険なのは笠戸だけじゃない。奥様に良い印象を抱かず、お前の失脚を目論む連中は上層部を含め一定数いる。だから奥様の身の安全のため結婚式も延期しただろう」


誰よりも逢花を幸せにできると傲慢にも信じていた。

契約結婚を持ち掛けたのは離したくなかったから、そして俺との関係や立場は対等だと認識してほしかったせいだ。

契約だと告げれば、彼女の遠慮は薄まると考えたのもある。

実際、契約なんてただの言い訳で、俺にとっては一生に一度のプロポーズだった。
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