花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「……話していない」


「なんでだ?」


「カッコ悪いだろ」


はあ、と大きなため息を吐いて誠が俺を諭す。


「ここまで恋愛音痴だと思わなかった。最愛の妻に向き合っていないお前が一番カッコ悪い」


「逢花とほかの女は違う」


「恋愛は綺麗でもカッコよくもない。本気になればなるほどしんどくてつらい出来事だってたくさんある。それでも手放せなくて、愛しくてたまらないから、必死になって求めるんだろ」


体裁なんて取り繕う余裕はない、と付け加えられ、目の前の靄が一気に晴れた気がした。

俺は、間違えていた。

完璧で強くあらねば、弱みを見せてはいけないと信じていた。


「奥様はお前にどんな態度で接していた?」


誠の声が頭の中に響く。

逢花はいつだって俺を理解しようと歩み寄ってくれていた。

一線を引いて距離を取っていたのは……俺だった。
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