花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
依玖さん、ずっとついていてくれたんだ……。


嬉しさと赤ちゃんが無事だった安心感にホッと息を吐いたとき、廊下からバタバタと大きな足音が聞こえてきた。


「逢花!」


扉が開き、息を切らせたスーツ姿の依玖さんが足早にベッドに近づいてきた。


「依玖さん……あの、付き添ってくれてありが」


とう、という前にギュッと抱きしめられた。

汗ばんだシャツ越しに伝わる速い鼓動に息を呑んだ。


「無事で……よかった……」


掠れた声の弱々しさに、どれほど心配をかけたのだろうと胸が痛くなった。

私に触れる指先は微かに震えていて、安心させたくて思わず広い胸元に頬を寄せる。


「心配かけて、ごめんなさい……もう大丈夫だから」


「生きた心地がしなかった」


さらに力を込めて抱き寄せ、髪にキスを落とす。

話したい事柄も聞きたい出来事もたくさんあるのに、胸が詰まって言葉にならない。

溢れる愛しさが涙になって零れ落ちた。


「愛している」


ほんの少し体を離し、震える指先で私の両頬を包み込んだ彼が、綺麗な二重の目を潤ませてはっきりと告げた。


「……え……?」


「逢花がいなかったら、俺はどうやってこれから先の人生を過ごせばいいかわからない。大事なんだ、誰よりも」


突然の情熱的な告白に面喰う私に、依玖さんはさらに言葉を重ねる。
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