花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「俺の気持ちは伝わっていると傲慢にも思っていた。きちんとすべてを言葉と態度に出さなくてはダメだと理解できず、苦しませて不安にさせて悪かった」


真摯な表情と言葉に胸が苦しくなる。

言葉を放つより先に、涙腺が崩壊した。


「ずっと不安で……依玖さんは美津さんが必要で、私は契約結婚相手で……」


もっとほかに聞きたい事柄や言いたいことがあるのに、うまく想いを口にできないのがもどかしい。


「違うよ、逢花。すべてを話すから聞いてくれないか?」


「……私も依玖さんとちゃんと話したい……」


やっとの思いで返答すると依玖さんがふわりと相好を緩め、涙を長い指で優しく拭ってくれた。


「正直、お前に負担をかける昨夜の出来事は話したくないが」


「事実をきちんと知りたいの」


「……わかっている」


不承不承と言った様子で私の前髪をかき上げ、了承してくれた彼に想いを伝える。


「あなたを、愛しているの」


言葉にした途端、想いが溢れ出して止まりかけていた涙が再び頬を伝う。

依玖さんは一瞬、目を見開いて、クシャリと端正な面差しを歪めもう一度私を腕の中に閉じ込めた。
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