花縁～契約妻は傲慢御曹司に求愛される～
「そんな、わけ」


「高野に気持ちがまだ残っているんじゃないかとずっと気になって不安だった……引きとめておくためにどうすればいいか何度も悩んだ」


思いがけない告白に、忙しなく鼓動が動く。


「逢花の身の安全はもちろんだが、高野から早く引き離したくて異動を急いだ」


「だから……理由を教えてくれなかったの？」


「カッコ悪いだろ、余裕がなさ過ぎて」


うつむいたままの彼の頭に小さく口づける。


「ううん、嬉しい。私と同じように依玖さんが想ってくれていて」


素直な気持ちを伝えると、素早く顔を上げた彼がギュッと私を長い腕で抱きしめた。


「食堂の会話の報告を受けて、頭が真っ白になった。嫉妬して自分の行いを棚に上げて、ひどい態度と最悪な言い方をした。本当に悪かった」


「じゃあ、あの関係解消って話は本心じゃないの？　後悔していたんじゃない？」


恐る恐る胸の中から問いかけると、きっぱりと否定された。


「違う！　あれは今さら嫌がっても離縁はしないという意味だ」


「よかった……私は必要とされていない建前だけの妻で、赤ちゃんがいるから義務で優しくして、無理やり好きになろうとしてくれたんじゃって怖くて……」


「俺は、逢花を誰より愛している」


私の目を真っすぐに見つめ、きっぱり言い放つ。

まるでネガティブな思考を完全に否定するかのように。
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