花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「逢花の本心を聞けて嬉しい。これからは今みたいに遠慮なく思った事柄をぶつけてほしい。どんな逢花も絶対に嫌いにならないから」


「ありがとう。依玖さんも自身の考えを話して。夫婦なのだから喧嘩しても、意見が違っても、ちゃんとひとつひとつ向き合っていきたいの。あなたをずっと想っているから」


「……本当に敵わないな」


私の耳元に長い指を差し込み、照れたようにささやく。


「え? 今、なんて?」


「――愛している」


唐突な告白に頬が熱くなる。


「私も、愛しているわ」


どうして想いを告げるだけでこんなに胸がいっぱいになって、泣きたくなるんだろう。

この人はどこまで私を溺れさせるんだろう。


「私に本当の恋を教えてくれてありがとう」


伝えたい気持ちはたくさんあるのに、うまく表現できない。


あなたがくれる言葉、仕草、眼差しのひとつひとつにこんなにも私が一喜一憂しているなんて、きっと想像もしていないでしょう?


すれ違っていた時間はとても重たく苦しかったけれど、今、やっと依玖さんの妻になれた気がした。


「どうかこれからも俺の妻でいてくれませんか?」


甘い懇願に迷いはない。

すぐに答えたいのに、涙が返事の邪魔をする。


「よろしく、お願いします」


滲んだ視界の向こうで私を抱き寄せ、眦を下げる依玖さんが見えた。
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