花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
逢花はいつも俺を賞賛するが、俺はお前こそが尊敬に値すると思う。

俺ができない出来事を、いつだって当たり前のように成し遂げるのだから。

そのたびに自分の思い上がりや器の小ささを思い知り、もっと成長しなければと心に刻む。

こんな俺に愛想をつかさず、寄り添ってくれる逢花には感謝しかない。

片付けを終えて、リビングに戻るとソファに寄りかかるようにして逢花が小さな寝息を立てていた。

無防備な様子に愛しさがこみ上げ、そっと頬に触れた。

指先から伝わる温もりに再び安心する。


本当に……なにもかも敵わない。


自分以外の誰かを心から愛することを知らなかった俺に、愛を教えてくれたたったひとりの人。

愛しすぎて胸が痛いなんて、逢花に出会って初めて経験した。


運命や赤い糸なんて信じていなかったのに、今は信じたくなったと言ったら笑うだろうか?


「逢花、待っていてくれてありがとう。……起きて、寝室に行こう」


そっと髪を撫でて、額にキスを落とす。

腕の中に柔らかな体を抱き寄せると、ほんの少し瞼を開く。


「ん……依玖さん……?」


最愛の女性に自分の名を呼ばれるだけで、こんなにも心が満たされる。

溢れる想いを込め、半分夢の世界にいる愛しい人の名前を口にする。


「逢花」
 

ふわりと相好を崩す姿に胸が詰まる。


なあ、逢花。


愛している以上の気持ちは、どうやって表現すればいいか教えてほしい。


この先、ともに生きていく人生の中で見つけられるだろうか?
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