花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「……大丈夫?」


気遣う声に小さくうなずくだけで精一杯だ。 

額に汗を滲ませて荒く甘い息を吐く姿に胸が締めつけられる。

胸の奥からこみ上げる、言葉にならない感情で胸がいっぱいになり、涙が滲んだ瞬間、彼が腰を大きく揺らした。

緩急つけた激しい動きに、感情と思考がまとまらず意味のない言葉が口から漏れた。


「逢花……」


腰を大きく回し何度も深く奥を抉られ、繋がり合った場所を指先でいたずらに触れられて、無意識に閉じてしまっていた瞼が開く。

愛欲に濡れた眼差しで私を貫く姿と汗ばむ体から発する熱がうつったかのように体がどんどん熱くなる。

思わず逞しい背中に腕を回してしがみつくと、荒々しく口づけられた。

唇を擦り合わせる間も一切視線を外さず、漏れ出る凄絶な色香にむせ返りそうになる。

キスを交わしている間ずっと、腰を揺さぶられ、頭の芯が甘くしびれていく。

ギュッとつま先が丸まって、力なくシーツを引っかく私の指先を葵さんの骨ばった指が捉える。

唇を解放し、指を絡めて手の甲に口づけ、指先を甘噛みする。

予想外の刺激に反応する私を宥めるように指先に順にキスをして、自身の頬にあてる。

汗ばんだ熱い頬の上で、大切そうに手を握られて胸が苦しくなった。

無意識にもう片方の手を伸ばすと、彼が目を見開きふわりと相好を崩す。


「お前は違うと信じていいか……?」


彼が零した言葉の意味を理解する間もなく、指がほどかれ、密着度が高まり律動が一気に激しくなって、息継ぎさえままならなくなる。


「……ここに、ずっといろよ」


瞼が閉じきる前、私を強く抱きしめながら切なさと情欲を宿した彼の目を見た気がした。
< 30 / 190 >

この作品をシェア

pagetop