花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
どうやらプロポーズも予想していたらしい。

だが美津が俺に抱く感情は、時間をかけても俺と同様友達以上恋人未満にしかならなかったという。

ちなみに俺が美津に恋愛感情はおろか、結婚願望もないのも見抜かれていた。

納得した美津は偽装婚約を解消した半年後、正式に両親が勧めるほかの男性と婚約した。


「まさか婚約パーティーに、元婚約者を招待するとはね。やはり多少の情と悔しさはあるんだろうな」


どこか面白がるような誠の口調に眉間に皺が寄る。

美津は深窓の令嬢のように見えて、実はかなり行動的な現実主義者だ。

そのため見合いをしても、先方から断られる場合も多かったらしい。

今回俺を招待したのはきっと、現況報告と体裁半分だろう。

少々自己中心的な面もあるが、裏表はなく、女性付き合いが苦手な俺が唯一信用している異性でもある。

久しぶりに会った美津に祝いの言葉を述べ、暇を告げると例の大きな花束を渡された。

彼女曰く、俺の今後の幸せを願う贈り物らしい。


『あなたが花束を贈りたい人に出会えるよう祈ってるわ。ずっとひとりは寂しいから』


穏やかに微笑む美津を思い出していたせいか、普段ならきちんと避ける水たまりに飛び込んでしまった。


……ひとりが寂しい? 


幼い頃より両親の期待はときに重く、しつけや学業面も厳しかったが、愛情をもって育ててくれたと理解している。
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