花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
俺を辟易させたのは、両親以外の一族による監視にも似た干渉だった。

名家の跡継ぎである俺に、周囲は常に完璧さと高評価を求めた。

ビジネスならば結果を出し、収益を上げるために目標を定めるのも納得できる。

だが俺の私生活にまで周りは理想や願望を押しつけてくる。

毎日が息苦しく、いつまで続くのかと心が疲弊していた。

煌びやかで豪華な生活は快適でも、裏側は散々で、笑顔の仮面の下でいつも腹の探り合いをしていた。

年齢を重ねるにつれ、すべてを割り切るようになった。

俺から搾取するのなら対価を支払えと開き直り、愛だの夢だのといった甘い感情は切り捨てた。

足枷になるような、心を震わせる存在など不要だ。

ひとりが一番気楽だ。

だが、逢花に出会った。

最初は巧妙な罠を仕掛けられたかと瞬時に考えた。

詐欺女性の真のターゲットは俺だと誠が口を酸っぱくして話していた。

ならば相手の策に引っかかった振りをして、逆に罠を仕掛けてみようかと秘書と相談していた矢先だった。

詐欺の手口は巧妙な偶然の出会いから始まる。

堤インテリアの社員を名乗り、仕事や人間関係の悩みを切実に訴えてくるらしい。

そのためほぼ条件に当てはまる逢花の一挙手一投足に注目していた。
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