花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
5.「お姫様を迎えにきた」
笠戸さんの結婚式当日は薄曇りで、複雑な私の心境を写し取っているようだった。

会場は、親会社系列のホテルで、待ち合わせ場所のロビーにはすでに凛が到着していた。


「逢花、そのドレスすごく素敵! よく似合ってるわ、さすが社長ね」 


「凛、声っ」


慌てて唇の前に人差し指を立て、周囲を注意深く見回す。


「こんなに人がいるんだから、大丈夫よ」


呆れたように肩を竦める親友にはドレスについて先日電話で報告していた。

一夜をともにした相手の正体になぜか凛はあまり驚かず、以前よりさらに詳しい情報をくれた。


『半年前に不動産業界大手、加賀谷商事の令嬢と婚約破棄。フリーとなった現在は縁談の嵐だそうよ。女遊びはもちろん、向けられる好意もことごとく拒絶するんですって』


『なんで、知ってるの?』


『今の時代、情報は溢れかえっているでしょ。それより、いい? 彼は常々、恋愛に興味がないと言い切っているそうよ。婚約のせいか、周囲へのカモフラージュなのかわからないけど』


『どうして、婚約破棄したの?』


単純な疑問に、親友は価値観の違いとしか発表されていないと教えてくれた。

その後、結婚式の待ち合わせ時間などを話して、通話を終えた。
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