花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
凛の助言に従い、ひとつ上のフロアへ向かう。
階下の賑わいが嘘のように静まり返っていた。
大きな窓の前には小さなソファスペースが幾つかあり、一番右端のソファにひとりの女性が座って電話をしているようだった。
背中半分くらいまである、毛先を巻いた髪を落ち着かない様子で触りながら話す女性の横顔はとても整っていたが、表情は暗かった。
しばらく座っていようと、周囲を見回したが、女性と私以外に人はいなかった。
一番左端のソファに腰を下ろし、バッグからスマートフォンを取り出し凛に上階にいるとメッセージを送った。
「お願い、少しでいいから会いたいのよ。パーティーが気に入らなかったの? だって仕方ないじゃない」
人気もなく静かなせいか、女性の会話が耳に入る。
できるだけ聞かないようにして、手の中のスマートフォンに視線を向けた。
「待って、切らないで。あの花束に深い意味はないのよ。もちろんブーケトスでもないわ」
花束、ブーケトス、という単語が耳に入って思わず反応してしまう。
「甘えているのも理解しているわ。でもふたりきりでもう一度話したいの。やっぱり好きなのよ……仕方ないでしょう?」
女性の会話の内容から電話の相手は元恋人、もしくは想い人かとぼんやり思った。
「だってうちとの付き合いは続くのよ? わかっているの、依玖? 加賀谷家との関係は良好なほうがいいでしょう?」
階下の賑わいが嘘のように静まり返っていた。
大きな窓の前には小さなソファスペースが幾つかあり、一番右端のソファにひとりの女性が座って電話をしているようだった。
背中半分くらいまである、毛先を巻いた髪を落ち着かない様子で触りながら話す女性の横顔はとても整っていたが、表情は暗かった。
しばらく座っていようと、周囲を見回したが、女性と私以外に人はいなかった。
一番左端のソファに腰を下ろし、バッグからスマートフォンを取り出し凛に上階にいるとメッセージを送った。
「お願い、少しでいいから会いたいのよ。パーティーが気に入らなかったの? だって仕方ないじゃない」
人気もなく静かなせいか、女性の会話が耳に入る。
できるだけ聞かないようにして、手の中のスマートフォンに視線を向けた。
「待って、切らないで。あの花束に深い意味はないのよ。もちろんブーケトスでもないわ」
花束、ブーケトス、という単語が耳に入って思わず反応してしまう。
「甘えているのも理解しているわ。でもふたりきりでもう一度話したいの。やっぱり好きなのよ……仕方ないでしょう?」
女性の会話の内容から電話の相手は元恋人、もしくは想い人かとぼんやり思った。
「だってうちとの付き合いは続くのよ? わかっているの、依玖? 加賀谷家との関係は良好なほうがいいでしょう?」