花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「逢花を迎えに来たんだ」


そう言って、彼はつないだ私の指先に小さくキスをした。

心臓がひとつ大きな音を立て、胸がきゅうっと甘く締めつけられた。


加賀谷さんに会うためじゃなく?


「贈ったドレスを着てる姿を見たかったし、泣いていないか心配だったから」


さらりと言われて、呼吸が苦しくなる。


気にかけてくれていたの? 


「あり、がとうございます」


うつむいて、掠れた声で告げるのが精一杯。

期待してはダメとわかっているのに、高鳴る鼓動と膨らむ想いを制御できない。


「逢花、俺は」


「逢花!」


彼の声を遮るように、凛の声が響いた。


「よかった、会えて! 逢花の結婚はいつってさっきからよく聞かれるんだけど、どうなってるの?」


「申し訳ない、私のせいです」


私を遮り、困惑気味の凛へ彼が説明する。

名刺を取り出して名乗り、今日はここに私を迎えに来たと先ほどの笠戸さんとの一件も加えて話した。

まさかの葵さんの登場に、凛は呆気にとられた表情を浮かべていたがすぐに状況を把握したようだった。


「親友を助けてくださってありがとうございます。檜垣凛と申します。逢花は社長と帰るのよね? だったら私も彼氏に迎えに来てもらうわ」


荷物の礼も付け加え、親友が名乗る。
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