花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「葵さん……っ」


性急な行為に頬が熱くなり、名前を呼ぶと情欲の滲んだ目を向けられた。


「逢花も葵になるんだから、名前で呼んで。もちろん敬語も不要だ」


思いがけない命令に瞬きを繰り返す私の目尻、頬、鼻に彼が小さなキスを仕掛けてくる。


「ほら、早く」


「い、依、玖……さん」


「もう一度」


首筋を甘噛みしながら、指示をする。


「依玖、さん」


「呼び捨てで」


下着だけになった胸元に唇で触れながら、じっと見つめてくる。

間近に迫る美麗な面差しと淫らな自分の姿に、体温が一気に上がる。


「年上、なので……敬語も、急には無理です」


再び首に口づけ、下着を取り払った胸を骨ばった指が覆う。

彼の手によって形を変える胸ともう片方には唇で触れられて腰が浮く。


「……可愛いな」


私を見下ろしながらスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを乱雑に緩める。

露になった喉ぼとけとシャツを脱ぎ捨てる姿に見惚れてしまう。


「見すぎ」


指摘され、羞恥に視線を逸らすと唇が荒々しく塞がれた。


「今度は逢花を見せて」


長い腕が腰を抱え、舌先で私の胸、お腹と順番に触れる。

中途半端に腰に絡まっていたドレスが足元から引き抜かれる。
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