花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「――初めまして、葵依玖と申します。お電話でもお伝えしましたが、逢花さんとの結婚をお許し願えませんか」
実家に到着し、緊張した面持ちの両親にリビングに通されるとすぐ、ふたりに向かって依玖さんは頭を下げた。
堂々とした物言いと完璧な容貌、所作に両親はおろか私も圧倒される。
「葵さん、どうか顔を上げてください。正直、唐突すぎて私たちは驚いているんだが……逢花はどうなんだ?」
父は心配そうな眼差しを向け、母は依玖さんの家柄を気にしている。
まさかこんなすぐに、新たな結婚話が出るとは思いもしなかったのだろう。
しきりに見合いを勧めていた母もさすがに度肝を抜かれたようで、困惑を隠さない。
自暴自棄になっていないか、弱みでも握られているのか、などとこっそり確認されたくらいだ。
「私は依玖さんと家族になりたい。出会って日は浅いけれど、私をとても大事にしてくれて信頼しているわ」
大好きな人だから一緒にいたいと正直に伝えられない苦しさと契約結婚という枷が胸に重くのしかかるが、上手に隠して口角を上げる。
心の中で両親に謝罪を繰り返す。
「逢花さんをずっと大事にします。よろしくお願いします」
再度頭を下げた依玖さんに倣うように頭を下げた。
戸惑いながらも両親は私が納得して幸せになれるならと祝福してくれた。
家柄を気にする母に、依玖さんは「逢花さんを必ず守ります」と力強く言い切っていた。
演技だとわかっていても嬉しくて、どうしようもなく切なかった。
実家に到着し、緊張した面持ちの両親にリビングに通されるとすぐ、ふたりに向かって依玖さんは頭を下げた。
堂々とした物言いと完璧な容貌、所作に両親はおろか私も圧倒される。
「葵さん、どうか顔を上げてください。正直、唐突すぎて私たちは驚いているんだが……逢花はどうなんだ?」
父は心配そうな眼差しを向け、母は依玖さんの家柄を気にしている。
まさかこんなすぐに、新たな結婚話が出るとは思いもしなかったのだろう。
しきりに見合いを勧めていた母もさすがに度肝を抜かれたようで、困惑を隠さない。
自暴自棄になっていないか、弱みでも握られているのか、などとこっそり確認されたくらいだ。
「私は依玖さんと家族になりたい。出会って日は浅いけれど、私をとても大事にしてくれて信頼しているわ」
大好きな人だから一緒にいたいと正直に伝えられない苦しさと契約結婚という枷が胸に重くのしかかるが、上手に隠して口角を上げる。
心の中で両親に謝罪を繰り返す。
「逢花さんをずっと大事にします。よろしくお願いします」
再度頭を下げた依玖さんに倣うように頭を下げた。
戸惑いながらも両親は私が納得して幸せになれるならと祝福してくれた。
家柄を気にする母に、依玖さんは「逢花さんを必ず守ります」と力強く言い切っていた。
演技だとわかっていても嬉しくて、どうしようもなく切なかった。