別れさせ屋に依頼をした私の結末
「2年D組、水城舞千佳さん。で、間違いないね?」
落ち着いたハスキーな声。
きっとそうなのだろうとわかってはいたけれど、問いかけられたことではっきりとした。
この人が、別れさせ屋なのか……。
「はい」
「遅くなってごめんね。だいぶ待ったよね?」
「いえ、大丈夫です」
言われて時計を見たけれど、時刻は17時半を過ぎたところ。外はまだ明るいから、困るほどではなかった。
室内を見回すと、ぽつりぽつりといた生徒の姿もなくなっていて、貸し出しカウンターの席にも図書委員の姿がない。
「起きたばかりのところ悪いけれど、単刀直入に聞くね」
無人と化しているかもしれないこの空間の中、別れさせ屋の彼はたんたんとした口ぶりで、事を進めようとする。
背筋を伸ばしてきちんと座り直すと、私を見つめるその目つきは途端に鋭くなった。
「君の依頼、ターゲットは誰?」
聞かれることだとわかっていても、理由から言いたかった話。
真っ先に聞かれてしまい戸惑う私は、小さく深呼吸をしてから答える。
「2年D組の、松山美奈……私の親友です」