別れさせ屋に依頼をした私の結末
掴んだ手首を下へとずらすキング。

手をどけられ、この表情を確認される気がしたのだけれど、彼は腕を下ろさなかった。

「俺になんて言ってほしかったわけ?」

そう言いながら、かがんで顔を近づけてくる。

その艶っぽい瞳の色で、この後の展開がわかってしまった。

目の前には、まぶたを下ろしたキングの顔。

これまでは、髪や耳、首、と彼の体の一部が視界に入っていたのに、今日は――

「……っ」

口にされる気がして、寸前のところでのけぞると、逃げられないようにするためか、キングはもう片方の腕を腰へと回してきた。

「ちょっと待っ……」

そこにはしないと言ったくせに。そう心の中で叫んだとき、ついばむように口づけられた。

「っ、キング……!」

心臓がバクバクと大きな音を立てる。

「喋らないほうがいいんじゃない? 当たるよ、唇に」

囁かれると、彼の息が唇にかかる。

キングは、鼻をこすっていた人差し指を、唇の前に持ってきていた。

人差し指を挟んでのキス。

少しでも動けば当たってしまうその距離に動揺し、顔がカッと熱くなる。
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