別れさせ屋に依頼をした私の結末
――昨夜、岡垣くんは私の家のそばまで会いに来た。

“ごめんな、こんな時間に”

“美奈から聞いて……。他の人にとられる前に早く言った方がいいって、言われて……”

“その、俺の気持ち……聞いたんだよね?”

慌てているみたいだった。自分の気持ちが他者の口から伝わってしまったことに。

“自覚したのは最近なんだけど……”

正直に言うと、気持ちを伝えられるとき、少しだけがっかりしてしまった。美奈と別れて間もないのに、と。

嬉しいとか、驚く感情もなく、ただただ“美奈の話は本当だったんだな”と思うだけ。

“水城のこと好きなんだ”

岡垣くんの真剣な言葉を、私は美奈の立場になって聞いていた。

頭に浮かんだのは、ボーリング場で泣いていた姿。マチだけには言いたくない、という言葉の意味。

ずっと悩んできたはずだ。寺尾はきっと、私には言えない話を聞いてくれていたのだろう。

並木から言われた“誤解”という言葉が、全てをつなげていく。

“美奈から聞いてるかもしれないけれど。私、1年のとき、岡垣くんを好きだった”

少し前の自分なら、ここまで落ち着いて考えられなかったのかもしれない。

ウソをついたという美奈には腹を立てて、岡垣くんの気持ちには嬉しさを感じていたはずだ。

でも、今の私は――

“ごめん。今はなんとも思ってないんだ。……他に好きな人がいるの”

迷うことなく、岡垣くんに返事をしていた。

好きだと言われても、胸はまったく痛くない。

好きだったのにな、と心の変化を再確認するだけだった。
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