別れさせ屋に依頼をした私の結末
「……どうなんだろ」

“そんなに?”と聞かれたら、悩んでしまう。

「そもそも、この恋を実らせたいって……考えたことはないの」

「え? 好きなんでしょ?」

「……うん。好きになったよ」

最初は苦手だった。

初対面では、依頼者である私の話を聞かず、自分のペースで物事を進めていたし、親身になってほしいところではあっさりとした対応をされ、直感で“この人とは合わないな”と感じた。

でも、ああ見えて実際は話を聞いているみたいだし、本当につらいときは親身になってくれた。

意地悪なことを言われたりするけれど、毎回、その表情はどことなく優しいの。

キングのことを知れば知るほど、最初に感じていたタイプとは全然違うのだと気づけた。

キスだって、彼は人の縁を壊すことの対価として私に提案している。

別れさせ屋というものやっているけれど、別れさせること自体は悪いことだとわかっているのだと思う。

いつの間にか、惹かれていた。

キスはもう対価になっていない。私はされることを嫌がっていないのだから。

されるときは毎回恥ずかしくて、ガチガチに凍りつくけれど、口づけられるたび、この気持ちは大きくなっていった。

岡垣くんの気持ちを知ってもなんとも思わなかったのは、キングのことを好きになっていたからだろう。
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