別れさせ屋に依頼をした私の結末
キスはただの対価。そうわかっているだけに、美奈の言葉には素直にうなずけない。

苦笑いであいまいな態度をとっていると、美奈はひと息ついて、真剣な表情をした。

「それに、人の気持ちは変わったりするよ? ずっとこのままでいたいと思っても、相手がマチに興味をなくしたら一緒に居られなくなる」

そう言って私を見つめるけれど、その瞳は私じゃない誰かを映している気がして……。

私は静かにうんとうなずいたあと、美奈にたずねた。岡垣くんのことはもういいのか、と。

「……大樹のことはまだ好きだけど、もういいんだ。……マチには振られたって聞いても、もう頑張れない。……疲れちゃったんだよね」

美奈はにっこり微笑むと、再び、お弁当を食べ始める。

「そっか……」

疲れるくらい悩んで、沢山泣いてきたのかもしれない。

今のふたりならまたヨリを戻すことだってできるのかもしれないと考えていたけれど、そんな単純な話ではないみたい。

「美奈も……またいい人が現れたら、話してね?」

今度は私も応援したい。

出来ることがあるなら協力もしたい。

私だって同じように思ってるよ。

「……。うん」

微笑みかけると、美奈は何か言いたげな顔をするが、何も言わず、間を置いてからうなずく。

「……え?」

「ううん」

様子が変だから首を傾げると、彼女は目をそらして黙々と食べ始める。

「……気になるよ、そんな反応されたら」

「や、まだ……。今はまだ……」

「“まだ”?」
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