別れさせ屋に依頼をした私の結末
「……あ、もうひとつ言わなきゃダメなことがある」

「何?」

まじまじと見られたことで、用意していた話題を思い出すことができた。

明日を待たずに学校へ戻ったのは、このことをいち早く伝えておきたいとも思っていたからだ。

「……美奈が、寺尾のことを好きになるかもしれないの」

「ほう。……で?」

対価としてキスまでしていたのに、キングは動いていなかったのではないか。裏切られていた気がして、そのことばかり考えていたけれど。

正直なところ、動いていないのなら、それはそれでよかったと思う気持ちもある。

「やめたい、寺尾と別れさせるのは」

キングは毎日動いていたと言っているけれど、今ならまだ間に合うはずた。

ふたりが引き裂かれてからじゃ、遅い。私は、美奈の次の恋を邪魔したくなかった。

「……了解」

キングは顔色を変えることなく、私の言葉を受け入れる。

「ごめんね、急に変えたりして」

身勝手な言動を反省していると、キングは本棚にもたれるのをやめて、私と向き合う体勢になった。

真剣なその表情は、ここで初めて顔を合わせたときのように淡白で、瞳の色も優しさを帯びていない。

急に依頼を取り下げて、キングを振り回す形になってしまった。勝手な私に腹を立てたのではないかと内心焦っていると……。
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