別れさせ屋に依頼をした私の結末
キングが返事をしなかったのは、並木が的外れなことを言ったからなのだろう。

本当に的外れだと思う。でも、

「ありがと」

普段から接点がなく、話しかけられてもきつい態度までとっていた私に、ここまでしてくれることをありがたく思った。

きっと、これを見せてきたのは、仲直りをさせたいと思ってくれたからだ。

そして、今回の、寺尾と美奈の様子を見に行こうと私に声をかけてきたのも、多分、キングが私のことを頼んでいたからなのだろう。

並木のお人好しな人柄に好感を持つ。

「水城」

「ん?」

階段から腰を上げる並木は、声をかけてきてからも私の表情をうかがい、ためらうように頭をポリポリとかいた。

「キングのこと、よく知らねぇけどさ。水城のこと、なんとも思ってなかったら、あんなふうに言ってはこないと思うんだ」

「……」

「だから、その……。後悔しないようにね」

並木は何も知らないから、そんな言葉をかけてくる。

私たちの関係が恋愛だと勘違いしているからだ。

でも、

「……うん」

キングから全てを聞いて、恋愛には発展しない関係だとわかっている私でも、これは勘違いしてしまいそうになる。
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